「冒険者稼業もやってみた。だが、どうにも性に合わなくてな。痛い目が多すぎて、実入りは少ない。」
— バスティオン砦の商人、収集家ヴィダー
去年の 9 月末、友人に誘われて、なりゆきで新しい会社とプロダクトを立ち上げてから、僕の時間は家庭と 2 つの会社のあいだで、取り返しがつかないほど細切れになりました。大量のプロジェクトに追われる極端な忙しさなら、これまでにもそれなりに経験してきたつもりでした。でも実際には、人生は街角のようなもので、曲がった先にはいつも、まったく新しい体験が待ち伏せしているのです。
今回のスタートアップでの役回りは、バックエンド開発やサーバー構築だけでなく、プロダクト企画、運営の枠組み、マーケティング、営業まで及びます。一つの頭で、これだけ違う役割を切り替えながらこなしていく。そのストレスの大きさに、思わず人生を疑ってしまうこともよくあります。
先日、食卓で妻に聞かれました。「そんなに忙しくして、結局そのぶん稼げてるの?」と。一瞬、返す言葉が出ませんでした。
起業する人の多くは、胸を熱くして、夢を叶えたい、世界を変えたい、あるいはせめて少しでも多く稼げれば、という思いを抱えています。でも自分を振り返ってみると、この道に踏み出したとき、これといった理由もなかった気がします。ただ「これをやるべきだ」と感じて、やった。それだけです(おいおい、脳みそはどこいった?)。
最初の会社 Protype の共同創業者とは、不思議な縁でした。親しい友人でも昔の同級生でもなく、BabyHome に短期間だけ常駐していた Web デザイナーの Ray です。知り合って 1、2 年後、ちょうど前後して互いに勤め先を辞めたので、いっそ一緒に会社を立ち上げました。なぜ彼と起業しようと思ったのか、どう説得したのかは、とうに忘れました(記憶力があまりよくないので)。でも、この数年の紆余曲折のなかで、二人は物事の進め方で、不思議なほど息が合いました。運と、あうんの呼吸で、こうして少しずつ 6 年目に入りました。
当初は会社を存続させることを目的に、案件の入金ごとに 20% をボーナスに回す給与制度を決めました。その結果、最初の 3 年は二人ともほぼ法定最低賃金しかもらえず、4 年目になってようやく少しずつ好転しました。それでも、いまの給料は、よそに雇われた場合の半分ほどです。ときどき自分のことを思うと、本当に 『ディアブロ III』 のあの名台詞、「痛みは多く、実りは少ない」そのものだな、と感じます。
食卓での、妻の矢のように鋭いあの一言に戻ると、僕はただ静かにこう答えるしかありませんでした。「別に多くは稼げてないよ。給料は前と同じ」。
なにしろ新しい会社はまだ利益が出ておらず、創業者は最低賃金しかもらえません。そして最初の会社のほうは、外部への投資があるので、僕は自分から給料を半分に削って、投じたお金の穴埋めに充てました。そんなこんなで、手取りは結局、前と同じくらい低いまま……(だからね、その脳みそはどこいったのって)。
給料の話になるたびに浮かぶ、妻の口元のあの冷ややかな笑みはさておき。もし「そこまで苦労して起業する意味があるのか、もう一度やり直せるとして、また同じ道を選ぶのか」と聞かれたら、僕の答えはやっぱり「はい」です。
僕にとって起業は、暮らしの一部のようなものです —— 仕事と生活が密に絡み合っている。僕が望んでいるこの暮らしの形には、自分の小さな事業が含まれていて、僕の趣味と人生を豊かに満たしてくれます。そしてちょうど、どうにか暮らしていけるだけのお金も稼げる。
起業したいと思う人には、それぞれのビジョンと、思い描く姿があります。すでにこの道を歩んでいる人にも、それぞれの現実と、最初の思いがあります。これは僕の、起業についてのとりとめのない話と、ちょっとした振り返りでした。さて、あなたの場合は?


